「亡国のイージス 上下」 (福井晴敏:著)
基本は「女王陛下のユリシーズ号」+「ダイハード」。登場人物が執拗に生と死のリアリティに拘る割にはどこかから借用したような台詞が続き、むしろ仔細に描かれるイージス艦内の描写や戦闘シーンから作者が勃起するポイントが透け透け。日本人以外の人間をすべてステレオタイプな悪人としてしか描けない浅薄な愛国感も鼻につく。
「残虐記」(桐野夏生:著)
最近の長編にしてはそれほど分厚くないのだが、読了後の疲労度はひけを取らない。「曖昧な話者」という小説技法が、あくまで娯楽小説の枠組みを崩さないまま見事に活かされていることに驚嘆する。
「あらすじで読む日本の名著」(小川 義男:編集)
意外と面白く読めたのも事実。でもあらすじじゃ「金閣寺」は分からないですな。